公園の遊具が撤去された理由!子供の遊び場はどう変わった?

この数年、子供たちも大きくなり公園に連れて行く機会もなくなりました。最近は、散歩の途中で公園を横目に通り過ぎるだけになりました。

こうやって公園に行かなくなり、改めて眺めてみると遊具が減ったと感じます。長女が保育園に通っていた15年以上前にあった遊具はほとんど無くなり、広い空き地のようになりました。

私自身が子供の頃は、近所の公園にあった雲梯やブランコ、回転ジャングルジムで毎日遊んでいました。今思えば、公園の遊具で遊んでいるうちに筋力や体力が自然について、その後のスポーツにも役に立ったのかな、と思います。

今は、公園で馴染みのあった遊具がどんどん撤去されています。どんな理由があって公園の遊具の撤去が進んでいるのか、ふと気になったので調べてみました。


スポンサードリンク




公園の遊具の発祥は器械体操の教育のため?!

公園が日本で造られるようになったのは明治6年で、「人々が皆楽しめる場」として開拓が進められました。

「慶応義塾五十年史」によると、福沢諭吉の考えで「学生たちが学問を続けるには肉体の健康は不可欠で、中庭を運動場としてブランコを造って盛んに運動させた」と記しています。

この記述の内容は資料から1868年(明治元年)とされ、日本では外国からの輸入もしくは日本国内での製造によって、この時期にはブランコが存在していたとされています。

明治時代は、ブランコをはじめ鉄棒、回転塔、木馬などの遊具は子供が遊ぶものというよりも、学校での器械体操教育の道具として使われていました。

子供の教育の場としての公園と遊具

その後、大正から昭和初期にかけては、貧しい家庭の子供たちの環境悪化に対して公園の遊びで浄化効果が期待できるのでないかという理由から、指導員が付いて遊びを教えていました。この頃の公園には、子供たちを育成するの役割もありました。

戦後になり、公園は子供の遊び場として遊具を拡充し、指導員の役割は児童福祉施設などへと移行していきました。

子供時代に公園の遊具で遊んで楽しかった思い出は誰しもがあるものです。しかし、平成となり2000年(平成12年)以降には公園の遊具は減少の一途をたどっています。

公園の遊具はどれぐらい減少しているのか?

国土交通省は、平成10年(1998)から3年ごとに公園の遊具の増減などについて種類別に調査をしています。

以下は「全国の都市公園等における遊具等の設置状況や安全点検の実施状況等」のデータから、ゆりかご型ブランコの数字だけを抜き出して作成した表です。

これを見ると、平成10年(1998年)~平成25年(2013年)の間で、ゆりかご型ブランコがものすごい勢いで減少していることがわかります。

ゆりかご型ブランコの数 減少数
平成10年(1998年) 14,198台
平成13年(2001年) 13,039台 1,159台減/3年間
平成16年(2004年) 3,628台 9,411台減/3年間
平成19年(2007年) 2,700台 928台減/3年間
平成22年(2010年) 2,011台 689台減/3年間
平成25年(2013年) 1,864台 147台減/3年間

箱ブランコ・ゆりかごブランコと呼ばれる向かい合わせに座るブランコで、平成10年には14,198台あったのが平成25年には1,864台にまで減少し、わずか15年の間に、箱ブランコの数は約10分の1にまで減少しました。

特に、平成13年から平成16年の3年間には1万台近くが撤去されています。この3年間に、一体何が起こったのでしょうか?

公園の遊具が撤去される理由とは?

平成9年(1997年)、当時9歳の女児がゆりかご型ブランコの底と地面に足を挟まれ、大けがする事故がありました。

ブランコ製造会社と市に賠償金を求める裁判となり、ゆりかご型ブランコの構造や設置方法などについて社会的にも大きな関心が寄せられた事故となりました。

当時、遊具によって起こった事故を調査する機関もなく、わかる範囲で拾い上げただけでも平成8年(1996年)~平成10年(1998年)の3年間に死亡事故が5件、重傷事故が11件も起こっていることが明らかになりました。

それらの事故のパターンから見て、「本来は静かに揺らして乗る遊具であるはずなのに、子供が想定外に大きく動かし無謀な遊び方をしたり、子供の遊び方が悪かったため」という理由で片付けられていたとされています。

遊具による死亡事故が重なった

その後、平成11年(1999年)~平成13年(2001年)にかけてゆりかご型ブランコによる痛ましい死亡事故が重なりました。

このことから、国会議員が動き、2002年にようやく国土交通省が遊具の安全基準について発表し、遊具メーカー自らが危険だと判断したゆりかご型ブランコを全国的に撤去するようになりました。

公園の遊具でのケガ事例

公園の遊具の安全性を見直すきっかけとなったゆりかご型ブランコの事故ですが、その他の遊具でもケガをする事例は数々ありました。

遊具の種類 ケガの内容
ブランコ
  • ブランコに乗っている時に、前を通った友人とぶつかった
  • 遊びの途中、友人が無人のブランコを揺らしたため顔に当たり永久歯が抜けた
滑り台
  • 滑る勢いがつきすぎて、地面に顔を打ち付けた
  • 滑り台の階段の途中で足を滑らせ落下、頭がい骨を骨折した
シーソー
  • 勢いよく乗って、シーソーから落ちて顎を縫うケガをした
  • シーソーと地面の間に足を挟み、足首を骨折した
回転ジャングルジム
  • 勢いよく回したため、手が離れてしまい振り落され全身を強打した
  • 回転を止めようとして、手首が挟まり負傷した

これは一例ですが、遊具の設置方法や構造が危険であったことから起こった事故なのか、子供の遊具の使い方に問題があったのかまでは調査はされていません。

ただ、子供がどの程度の勢いをつけたら危ないのかを予測しながら遊んだり、遊具との距離がどの程度なら安全なのかを判断することができていれば、また違っていたのかもしれませんね。

どんな遊具にも危険がはらんでいる、ということになります。現在は遊具の見直しがされ危険な遊具は撤去されていますが、正しく使うことで、より安全に遊ぶことができるのではないかと思います。

増加している遊具もある?!

平成10年から15年の間に、約5倍に増加している公園の遊具があります。健康器具系施設と呼ばれるもので、背伸ばし・懸垂・足つぼなどができる遊具はこの15年でどんどん増加しています。

少子高齢化となる現在、公園を幅広い世代にとって有意義な場所となるよう変化してきています。

まとめ

ゆりかご型ブランコは、上下の動きに限ってだと約200kgの鉄の塊が地面から数cm~50cmのところでピストン運動をしているのと同じだと言われています。

もし、ゆりかご型ブランコと地面に挟まれた状態となれば衝突時の衝撃の逃げ場がなくなり、挟まれた人に全ての衝撃がいってしまいます。

なぜ危ないのか理屈を知ると、もし子供がゆりかごブランコの近くで転倒したらとても危険だということがわかりますね。

おなじみの遊具がどんどん減っていくのは寂しいことですが、子供たちの遊び方も時代の流れで変化しつつあります。公園がより安全で楽しい場所になることを望んでいます。


スポンサードリンク



あわせて読みたい関連記事

サブコンテンツ

このページの先頭へ