ハチドリを日本で目撃!本当に生息しているの?
ある日、夫婦ででテレビの動物特集を見ていたときのことです。その日は、世界最小の鳥、ハチドリの特集。色鮮やかでキュートなその姿に見とれていたら、旦那がすかさず、
「あれ?俺、これ見たことあるわ」
何言ってんの。いまテレビで、アメリカと南米にしか生息してないって解説してたでしょ?とツッこんでも、確かに見た!と言ってききません。しかもウチの庭で見た、というのです。
なんぼなんでもありえない…でももしそれが事実なら、鳥類の生態系に関する大発見かも…。にわかにソワソワしだす私たち夫婦。いやしかし、どこかで飼っていたハチドリが逃げてきた、という可能性もあるし…。
とりあえず、日本で他にも目撃情報があるのかどうか、まず調べてみることにしました。
ハチドリってどんな鳥?
ハチドリは文字通り「蜂鳥」と書きます。ハチのようにブンブン羽音を立てることから、そう呼ばれているようです。英名も「ハミングバード(ブンブンいう鳥)」と言いますので、ほぼ直訳ですね。
体長は大きいものでもクチバシを含め20cmほど、マメハチドリという最小の種に至っては体長5~6cm、体重は2gほどしかありません。
全長の1/4ほどを占める長いクチバシが特徴で、このクチバシを花の中に突っ込んで、蜜を吸って滋養を吸収しています。
命名の由来となった「蜂のような羽音」ですが、実際ハチドリは蜂のようにホバリング飛行をしながら蜜を吸います。ホバリングとは高速で羽をはばたかせながら空中で静止することです。
このホバリングに要する体力はハンパなく、そのため彼らは蜜からせっせと糖分を吸収し、それを高い代謝力でエネルギーに変えている、というわけなのです。
生息地は、北米大陸の南部からカリブ海諸島を経て南米アルゼンチンあたりまでで、それ以外の大陸では見られません。あの有名なペルーのナスカの地上絵は、この鳥を描いたものだと言われています。
主に暖かい地域に生息する鳥のため、どの種も羽毛は鮮やかな色で覆われています。小さくて色鮮やかで飛んでいる時にキラキラ輝いて見えることから、空を飛ぶ宝石のようだ、とも言われています。
そのため、生息地の北米などでは、砂糖水をポットに入れ、それを軒下に吊るして、彼らが蜜を吸いに来るのを鑑賞するのだそうです。
日本のハチドリって?
では問題の、旦那が見た!と主張する、我が家のハチドリはいったい…?ちなみにハチドリはワシントン条約で、輸入禁止となっている鳥類なので、近所の家で飼っているモノが逃げた、ということはまずありえません。
とりあえず動画を撮って検証しよう、ということになり、庭のダリヤが咲くあたりで待ち伏せを試みてみました。
しかしながら、その週末は空振り。次の週末も雨で空振り。そして3週目!ついにそいつがやって来たのです!
指一本ほどの大きさの緑色の小さな鳥!ホバリングしながら、クチバシのようなものをダリヤの花に突っ込んで、蜜を吸っているではないですか!その姿はまさにテレビで見たあのハチドリ!
慌ててスマホで動画撮影。もちろんその間も、じっくりその鳥を観察していたのですが、なにせあまりにも目まぐるしく飛び回るため、肉眼ではよくわかりません。そのうちにその鳥らしきものは飛び去ってしまいました。
「あれホントに鳥かなー?」
「んー、よく見るとなんか頭の部分が違ってたような…」と旦那も答えがあやふやに。
飛び方は確かにハチドリそっくりなのですが、どうも怪しいのです。もしかして鳥ではないのでは?と思い、早速、動画を検証してみました。
結果、やはり鳥ではありませんでした。画像は蜂のようにのようにも見えたのですが、いろいろネットで調べてみると、それは「オオスカシバ」というススメガの一種でした。下の写真がそうです。
色鮮やかなのに加え飛び方もそっくりなので、よく日本でハチドリに間違われるそうです。私たちが見たオオスカシバは、街中でも普通に生息している蛾なんだとか。
他にも「ホシホウジャク」と呼ばれるものも、よく見間違われるらしく、やはりこれもスズメガの一種。下の写真がそうです。
写真を見ると違いが一目瞭然なのですが、このスズメガたちが高速で飛び回っているところを見ると、たしかに勘違いしても仕方ありませんね。
実際このスズメガは、ブラジルでも「ハチドリ蝶」と呼ばれているらしいです。やはりどこでも見間違われるんですね。
おわりに
結局、「鳥類生態系の常識を覆す大発見」という私たち夫婦の野望(?)は、あっさりついえたわけなのですが、まあ蛾とはいえ、見ていてキレイだったし、ひとときの夢も見れたし、よしとするか、ということに落ち着きました。
その土地でしか見られない生き物は、その生息地に行って見るのが本当に感動するものなのかもしれません。いつかカリブ諸島あたりに行って本物のハチドリを見よう!と楽しく夢見ている私たち夫婦でした。