就職試験の面接!ノック2回はトイレと同じ?

先日、人事部の同僚から面白い話を聞きました。所属部署で毎年、就職試験に関わっている彼女がいつも疑問に思うことがある、というのです。

面接の時ね。ノックするでしょ、ドアを。あれ、みんな3回なんだよねえ」

彼女の感覚では、2回が普通だというのです。同感です。私も入室のときは、いつも2回です。

「最近は3回が主流なの?」

うーむ・・・そう言われても・・・人が何回ノックしているかなんて、あまり意識したこともないので、なんとも言えません。

そこで、マナーの勉強もかねて、ちょっと調べてみることにしました。


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プロトコール・マナーってなに?

いろんな就職サイトを覗いてみると、確かにノックは3回を推奨している所が多いようです。

その根拠は、2回はトイレの場合だからタブーだというもの。なんでも「プロトコール・マナー」という世界標準マナーで、そう決められているのだそうです。

プロトコール・マナー? 初耳です。そこでそのプロトコール・マナーというものを検索してみると・・・

ひっかかってくるものは「プロトコール・マナー協会」「日本マナー・プロトコール協会」など、いずれも国際的なマナー教育を行う民間団体の名称です。

それら団体の主旨を読んでみると、国際的な交流の場における接客態度を学ぼうというもので、おもてなしの精神を基本としたマナーの修得を目指す、というものでした。

もともと「プロトコール」というのは、「国際儀礼」という意味で、国家元首、あるいはそれに準じた地位の人物を招く際、国際交流の場が円滑に進むよう取り決められた、基本的なマナーのことです。

例えば、国旗掲揚、席順、服装などにおいて、国家間で文化や習慣が異なることを考慮し、招待客へ非礼がないよう、あらかじめ基本的なルールを定めてあるわけです。つまり、本来は国レベルの大掛かりな約束事なんですね。

それが、国際交流が頻繁となった現代で、民間レベルへ適用されていったのが、「プロトコール・マナー」の正体のようです。実際こういう名の規律は存在しませんし、明文化された規定もありません。

つまりあくまで「こうあるべきが望ましい」ということであって、厳格に決められたものではないのが実情のようです。

多くの就職サイトで語られている「プロトコール・マナー」とは、実際は「推奨すべき国際的なマナー」ということだったんですね。

正しいノックの回数は?

さて、さまざまな就職サイトから、面接試験でのノックの回数に関する記述を取りあげてみると、おおむね以下のようになります。

  • 2回・・・トイレの場合
  • 3回・・・親しい間柄の場合
  • 4回・・・正式な場合

つまり、面接における正しい回数は4回だが、日本では一般的に4回は多すぎる、という印象があるため、3回でもOK。ただし2回はトイレ用になってしまうので絶対にNG、ということらしいのです。

これが「プロトコール・マナー」という世界標準マナーで正式に定められている、就職面接で実際に、ノック2回で減点された例もある、とかなり断定的な書き方をしています。

しかし、先程も書きましたが、「プロトコール・マナー」という明文化された規律はありません。念のため、前述の日本マナー・プロトコール協会が実施している検定試験の過去問題を調べてみたのですが、ノックに関する問題は1問もありません

それなのになぜ「2回はNG」としているのでしょう?なんだか変ですよね。そこでもう少し突っ込んで調べてみると・・・

どうも「2回はNG」説は、あるマナー講師の方が提唱したのが、始まりのようです。その方は元・航空会社の国際線CAだとか。どうやら所属していた航空会社でそのように学んだ、ということのようです。

ちなみに、侯爵の息女で、幼少時をイギリスで過ごした経験のある酒井美意子氏のマナー本によると「欧米ではトイレをノックする習慣はない。なぜなら『早く出ろ』という意味になってしまうから」とのことです。

これは、海外旅行のマナーについて述べたサイトでも、同様の記述が出てきます。海外、特にヨーロッパでは、トイレでノックをすると、急かしている印象を与えるので良くないのだそうです。

その記述に則ると、「2回はNG」は世界標準マナーでもなんでもない、ということになりますね(笑)

推論にすぎませんが、どうもこの件は、誰かの思い込みが誰かに伝わり、それが「プロトコール・マナー」という名の幻想と化して、ここ数年の就活ブームに乗り、ネット上に流布した、と思えてなりません。

現に、ここ30年ほどのマナー教習本で、ノックの回数を記述しているものは少なく、あったとしても2回、あるいは2~3回、とかなりアバウトです。

以上の事実を踏まえて考えてみると、私には「2回はNG」説は、都市伝説に近いもののように思えてなりません。もちろんただの私見にすぎませんが。

おわりに

さて、人事部の同僚が、面接官である上司に以上の話をしたところ、「ノックの回数なんていちいち気にしたことないよ」という返事だったそうです。

「だいたい国際マナーに精通している面接担当者なんて、この世の中に何人いるの?」と不思議そうに言っていたとか。

まあ、ウチのような中小企業大企業は多少事情が違うのかもしれませんが、それでもノックが1回多いか少ないかを採用のポイントにしている会社なんて、恐らくないのでは?

面接官は、応募者の人となりを見ているのです。相手の目を見て話すとか、ハキハキしゃべるとか、背筋を伸ばして着席するとか、そういう基本的なことができていれば、マナーとしては問題ないはずです。

どうしても気になるのなら、3回ノックをすればいいと思います。でも私にはそれが就職の合否に関わるほど重大なこととは、とても思えません。

あまり細かいことにこだわらず、就職面接の場では自分らしさを出せれば、それが一番いいんじゃないでしょうか。


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