夏目漱石の『三四郎』美禰子の本心は?

先日、高校生の従弟からこんな相談をされました。

「国語で夏目漱石『三四郎』を読むんだけどなんだかよくわからないんだよね。美禰子は誰が好きだったの?

みなさんも読んだことがあるでしょうか、夏目漱石の『三四郎』。美禰子の本心が一体どこにあるのか、なかなか、難しい問題のように思えます。そんな『三四郎』について調べてみました。


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あらすじ

熊本の高等学校を出た三四郎は、東京帝国大学に入学すべく上京します。東京の「現実世界」はそれまでの三四郎の常識とはまったく違った世界で、カルチャーショックを受けることになります。

同郷の先輩の野々宮君、同級生の与次郎、野々宮の妹よし子、汽車で出会った広田先生、野々宮の友人里見の妹である美禰子(みねこ)

いろんな人物と出会い、三四郎は、自分が、三つの世界に囲まれていると感じます。

一つ目は、故郷である九州の田舎。二つ目は野々宮や広田先生のいる学問の世界。三つ目は、美女や華美なもののある世界です。

三四郎は、謎めいたふるまいをする美禰子想いを寄せていきますが、気持ちをうまく伝えることが、できません。

自分に気があるようにも見え、野々宮を意識しているようでもある、美禰子の真意は、わからずじまい。物語終盤に突如として登場する紳士と美禰子は婚約してしまうのでした。

迷える子(ストレイシープ)

物語中盤で、三四郎は数人の仲間たちと菊人形を見に行きます。そのとき具合の悪くなった美禰子に付き添い三四郎と美禰子は仲間たちから離れます。

勝手にいなくなってしまったので、みんなが自分たちを探しているだろうと三四郎は言います。

それに対し、美禰子は
責任を逃れたがる人だから、丁度好いでしょう
と言うのです。

これが誰を指した言葉なのか、美禰子は三四郎から問われても答えません

美禰子が一体誰に対してそれを言ったのか、どんな意味を込めて言った言葉だったのか、深く読み込んでみるのも面白いでしょう。さて、さらに美禰子はこの後このように続けます。

「迷子」
 女は三四郎を見たままでこの一言を
繰返した。三四郎は答えなかった。

「迷子の英訳を知っていらしって」

 三四郎は知るとも、知らぬとも
言い得ぬ程に、この問を予期して
いなかった。

「教えてあげましょうか」
「ええ」
「迷える子(ストレイシープ)――解って?」

謎めいたセリフです。ストレイシープとは「迷える子羊」のことで聖書から来ている言葉ですね。

迷子という現状をただ単に英語にしたわけではなく、悩みを抱えて迷っており答えが出せないことを暗に言っています。

誰も好きじゃなかった?

美禰子は、周囲の男性に好意や興味はあっても、恋愛対象として熱愛していたわけではない、という説もあります。

美禰子は、裕福な家のお嬢さんであり、美貌を持ち、知的でもあり、自分に自信がありました。そのため、男性が自分にあこがれの念を抱くことを期待したのではないでしょうか。

相手が自分の魅力に気が付かないなら進んでアピールしてでもです。

そうして美禰子は、何人もの男性からのあこがれの視線の中に生きながら、しかし自分で心から誰か一人を愛することはできず、最後には平凡な生活を求めて、銀行家との結婚を決意してしまったのです。

美禰子は一体誰に対して恋愛感情を持っていたのか……それは美禰子本人にすらわからなかったのではないでしょうか。

美禰子こそ「迷える子(ストレイシープ)」だったのではないか、と考えることもできます。

「夏目漱石の『三四郎』美禰子の本心は?」まとめ

誰も好きじゃない、という解釈もあるんですね。従弟に教えてあげようと思います。

『三四郎』は解釈の難しい小説ですが、逆に言えば自由に解釈のできる小説でもあります。言葉のひとつひとつ、登場人物がセリフに込めた意味やニュアンスをじっくり自由に味わってみましょう。


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