ガムを噛んでいれば歯磨きはいらない?効果の違いを調べてみよう
私の職場の女子トイレは、ランチタイムの後、とても混雑します。なぜならみんな歯を磨くから。お互い気を遣いつつ、代わりばんこに洗面台を譲り合っては、歯のお手入れに余念がありません。
ところが。鏡を覗き込みながら、必死でゴシゴシとやっている、そんな私たちを尻目に、余裕でメイク直しをしているのが、若手女子社員のM子ちゃん。訊けば、歯磨きガムを噛むから実際に磨かなくてもいいんだとか。
「歯磨きガムって言うぐらいだから、歯磨き効果があるんですよ、きっと!これで虫歯予防はバッチリ!」と、かなり自信満々なM子ちゃんですが、どうもその根拠がなんとなく曖昧…。
本当にガムを噛んでいれば歯を磨かなくてもいいのか?M子ちゃんのためにも、調べてみることにしました。
虫歯の原因
虫歯は主に、ミュータンスレンサ球菌と呼ばれる虫歯菌によって引き起こされます。この菌は体内に取り込まれた糖分を分解し、酸を発生させ、歯を溶かそうとします。
そこで活躍するのが、唾液です。唾液はアルカリ性のため、虫歯菌が生成した酸を中和させる働きがあります。また、いったん溶けた歯の一部を、元に戻す「再石灰化」という機能も備えているのです。
つまり人間の口内は、虫歯菌と唾液が闘いながら、常に歯を正常な状態に保とうとしている、ということになります。
虫歯菌は、食べカスや歯垢などに潜んでいます。ここに甘いものを摂取すると、口内が一気に酸性化して虫歯になりやすくなってしまいます。ですから、できるだけ唾液が機能しやすいよう、口の中を清潔にしておかなければなりません。
また、唾液は身体が活動状態にあるときは、活発に生成されますが、眠っている時には生成が鈍くなる傾向があるため、就寝前の歯磨きは必須です。寝る前によく歯磨きしなさい、と私も親によく言われましたが、それにはそれなりの理由があったんですね。
ガムの効果は?
ではガムを噛んでいれば本当に歯磨きしなくても大丈夫なのでしょうか?
虫歯予防の代表的なものとして、キシリトールやリカルデント入り、また最近ではM子ちゃんも愛用していた「歯磨きガム」というものも市販されていますが、実際の効果のほどはどうなのでしょう?
結論を言ってしまうと、答えはNOです。ガムには歯磨きの効果はありません。確かにキシリトールやリカルデントなどは、酸の生成を抑制する働きがあるのですが、唾液のように再石灰化までには至りません。
また、虫歯菌の元となる歯垢や歯間の汚れは、歯ブラシなどの器具を使わなければ絶対に除去できません。ガムを噛んでいるだけでは、対処できないのです。
確かに、ガムを噛むことによって、唾液の生成を促進させるという効果はあります。ですが、ガムはあくまで歯磨きのサポート的な効果のみ、ということを頭に入れておきましょう。
虫歯予防に効果を発揮するのは、やはり規則正しい歯磨き習慣、そして歯間ブラシやデンタルフロスなどを使った、細かいケアに尽きるでしょう。
ちなみに、ガムは左右どちらかの歯を集中して使うため、噛み合わせが悪くなってしまう、という弊害もあるようです。また、摂りすぎるとお腹がゆるくなってしまいますので、適量を心がけましょう。1日3回、毎食後に噛むのがベターなようですよ。
おわりに
そんなわけで、M子ちゃんのガム神話はもろくも崩れてしまいました。自分が虫歯菌を放置していたことにショックを隠せない彼女。すると今度は一転、電動歯ブラシ一式を買いそろえ、徹底ケアを目指し始めました。
まあ彼女が虫歯になって痛い思いをしないに越したことはないので、それはそれでいいのですが、今度は女子トイレの鏡の前から動かなくなってしまったのです。
ひたすら電動歯ブラシをウィンウィンと言わせながら鏡とにらめっこしている姿は、ちょっと滑稽でもあります。M子ちゃん、気持ちはわかるんだけど、ただでさえ混雑してるんだから、洗面台を占領しないでよね。